お知らせ

さくらサイエンスプログラム活動報告(2016年6月13日-22日)文責:大野美紀子

日時:2016年6月13日(月)― 22日(水)
場所:東南アジア研究所 図書室、稲盛財団記念館 情報処理室、共同棟4階セミナー室 等

さくらサイエンスプラン »

プログラム
6月13日(京都大学)
 ・午前:オリエンテーション
 ・午後:京都大学東南アジア研究所図書室にて、大野美紀子助教による「日本・東南アジアにおける学術情報基盤環境の比較」講義を受講し、東南アジア諸語資料所蔵とそのデジタル化等の活用状況を視察

6月14日(京都大学)
 ・午前:京都大学東南アジア研究所情報処理室にて木谷公哉助教による「東南アジア逐次刊行物データベース構築スキーム」を受講し、ビルマ語表記を可能としたWeb font実装多言語データベース構築について研修。
 ・午後:京都大学東南アジア研究所地図室にて、東南アジア地図資料と同研究所開発の非文字資料・パーリ文字資料アーカイブズデータベースである「地図データベース」構築とタイ「三印法典データベース」の運用状況について研修。

6月15日(京都大学)
 ・午前:京都大学附属図書館にて、ラーニンゴコモンズ・メディアコモンズ等利用者サービス施設を視察。
 ・午後:立命館大学平井嘉一郎記念図書館視察

6月16日(情報通信研究機構ユニバーサルコミュニケーション研究所・国立国会図書館関西館)
 ・午前:国立研究開発法人情報通信研究機構ユニバーサルコミュニケーション研究所において、ビルマ語搭載多言語自動翻訳技術開発とその運用について研修、最先端科学技術の開発現場視察。
 ・午後:国立国会図書館関西館にて障害者サービス施設・自動書庫設備を視察し、同アジア情報課においてアジア地域資料収集と国内初のビルマ語目録データベース構築について研修。

6月17日(京都大学)
 ・午前:京都大学北部構内図書室において、Web of Science等電子リソース講習を受講するとともに、学術機関における電子リソースの運用とサービス提供について研修。
 ・午後:東京都へ移動(新幹線利用)

6月18日(東京外国語大学)
 ・午前:東京外国語大学附属図書館にて、同館所蔵ビルマ語資料及びビルマ語原綴表示OPAC構築について視察。
 ・午後:岡野賢二准教授(東京外国語大学大学院総合国際学研究院)による「日本におけるビルマ語資料の所蔵と多言語OPAC開発状況」講義を受講

6月19日(東京都内)
 ・成果報告会準備

6月20日(国立情報学研究所)
 ・国立情報学研究所でNACSIS-CAT総合目録データベース及びJAIRO構築・運用状況の視察

6月21日(ジェトロ・アジア経済研究所図書館)
 ・午前:ジェトロ・アジア経済研究所図書館でアジア地域資料目録データベース及びリポジトリARRIDEの構築・運用状況視察
 ・午後:成果報告会(関係各機関研究者・専門家による講評と意見交換)

 

 

2015年度 さくらサイエンスプログラム(2016年6月13日-22日) 報告

2016年さくらサイエンス交流プログラム招聘機関

 京都大学東南アジア研究所では、JSTさくらサイエンス交流プログラムを活用し、「東南アジア地域における学術情報基盤環境の構築・整備支援」をテーマとして、東南アジア諸国の図書館員・図書館情報学研究者を招聘し、当研究所の学術情報基盤構築スキームを研修するとともに、国内連携機関における関連テーマに係る視察・実習を行っている。東南アジア研究所は80年代半ばから東南アジア諸国の図書館員を招聘しており、また研究所内図書室の見学者・利用者も多い。このような東南アジア諸国図書館との恒常的な交流を介して、さらなる学術情報の交流を進めていくためには、日本と東南アジア諸国との学術情報基盤環境の相違を双方で基本認識として共有する必要があるというのが本プロジェクトの発端になっている。

 日本の学術情報基盤は、国会図書館(以下NDL)と国立情報学研究所(以下NII)の2大国立機関が運営する総合目録データベース(以下、DB)に大学・公立図書館が縦横にリンクし、緊密に関係する2大DB上に各機関から時々刻々と情報がアップデートされている。本プロジェクトでは、この大小規模の情報インフラがつくりあげる学術情報基盤を総合的に理解し、最先端から末端の現場まで体験してもらうプログラムを構成している。

 招聘者の平均年齢は30歳代と各々の職場における業務に習熟しかつステップアップを狙う世代を対象とし、交流活動自体にOJT研修の意味をもたせている。招聘側・受入側とも複数機関が参加するため、研修内容も招聘側の希望を採り入れた多様な構成が可能となっている。また、図書館という女性が多く活躍する場がメインであるため、招聘側・受入側とも女性の専門職・研究職が多く参加し、プログラム期間中のみならず終了後についても参加機関間の情報交換が活発に行われている。

 今年度は6月にミャンマーのヤンゴン大学・ヤンゴン東部大学・イエジン農業大学・ヤダナボン大学の4機関から、図書館員4名・図書館情報学研究者6名の全10名を招聘した。

 研修日程前半(6月13日~17日)は、京都大学、立命館大学、国立国会図書館関西館、国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)情報学で行われた。京都大学では、東南アジア研究所内図書室・情報処理室・地図室、また学内の附属図書館、北部キャンパスの理学部中央図書室、生物科学図書室で研修をおこなった。また、国会図書館関西館、立命館大学平井嘉一郎記念図書館のほか、NICTユニバーサルコミュニケーション研究所を視察した。

  日程後半(6月18日~22日)は、東京・千葉の東京外国語大学・国立情報学研究所・アジア経済研究所図書館が研修受入先となり、招聘側各機関がそれぞれの機関としての特徴に応じて、日本における学術情報基盤環境の全体像と将来的展望、ビルマ資料コレクションなど多様な研修内容を展開した。

  研修に対する反応では、おおむねインフラ建設途上にある同国事情が色濃く反映したと言える。同国図書館における直近課題である施設整備、図書館業務については関心が集まり、附属図書館のラーニングコモンズ、関西館の自走書庫、立命館大学の新図書館など図書館施設の運用や、京都大学北部キャンパス各図書室における貴重資料修復例や資料管理システムなど日常業務について、活発な質疑応答が交わされた。一方で、国立情報学研究所が行っている大規模な情報基盤環境やNICTユニバーサルコミュニケーション研究所・東京外国語大学のICT環境におけるビルマ文字搭載の最先端技術については、提供される日本側技術情報と自国内状況とを比較しながら熱心に理解に努めていた。また、東南アジア研究所、国会図書館関西館、東京外国語大学、アジア経済研究所図書館と、日本国内に所蔵されているビルマ関係資料の蓄積量に感銘を受けたようであった。 

 JSTさくらサイエンス交流プログラムを活用した「東南アジア地域における学術情報基盤環境の構築・整備支援」プロジェクトは、今回で4回目、東南アジア研究所招聘者も含めて参加者は延べ50名となった。東南アジアの経済発展途上にある国々において、学術情報基盤環境構築は切実な克服すべき課題であり、日本側に熱い期待が向けられている。その期待に応えるべく、今後研修テキスト作成など継続的な支援方法を検討していく必要があると感じている。

(文責 大野 美紀子)